「全」大腸ポリープ切除という考え方

大腸がんはどのように発生するかというと、殆どは良性の大腸ポリープ(腺腫)が時間とともに大きくなる事で大腸がん(腺がん)に変化します。進行型の大腸がんで発見された場合は外科手術が必要ですが、良性の大腸ポリープや早期大腸がんの多くは内視鏡を使った治療で完全切除が可能です。

日本での大腸ポリープ治療は6mm 以上の大きさになってから切除するのが標準です。その理由は「5mm 以下の大腸ポリープが既にがんになっている可能性が極めて低いから」です。しかし小さな大腸ポリープはそのまま体に残る訳ですから、将来6mm 以上に成長すると大腸がんになる危険性が高まるので、定期的な大腸内視鏡検査が必要となります。残念ながら小さな大腸ポリープが6mm 以上になる時期を知っているのはまさに「神のみぞ」と言ったところで、人によっては何年間にもわたり大腸内視鏡検査を受け続けなければならないのです。

一方、欧米での大腸ポリープ治療は大きさに関係なく全て切除するのが標準です。その理由は1990年代に米国で行われた研究で「大腸ポリープを全て切除する事で大腸がん死亡が大幅に減った」事が証明されているからです。

そんな欧米に遅れる事30年、日本でも2020年にようやく大腸ポリープを全て切除する治療指針が発表されました。全ての大腸ポリープが切除されてしまえば何年間も大腸内視鏡検査を受ける必要がなくなります。

当院では既に全大腸ポリープ切除を行っております。治療をご希望の方はお気軽にご相談ください。

尚、全大腸ポリープ切除の翌年は大腸内視鏡検査を再度受けて頂いております。理由は大腸ポリープの見落としが見つかる事があるからです(どうもすいません。)。

翌年の大腸内視鏡検査でポリープが見つからなかった状態を「クリーンコロン」と呼びます。大腸がんの原因である大腸ポリープが存在しない訳ですから、大腸がんになるはずがないのです。なので当分の間、大腸内視鏡検査はおろか大腸がん検診も受ける必要がありません。しかし2020年現在も「どうして大腸にポリープが生えるのか」その原因はよくわかっていません(WHO はハムやソーセージなどの加工肉や赤身肉が危険因子としていますが)。そのため「クリーンコロン」判定後も3年に一度大腸内視鏡検査を受けて頂くようお願いしています。

また初回の大腸内視鏡検査で大腸ポリープが見つからなかった場合、大腸ポリープの「できにくい人」と思われますので5-10年に一度の大腸内視鏡検査で良いと言われています。その場合も合間に大腸がん検診を受ける必要はございません。